英語みたいな日本語だなと感じた本でした!今までに読んだことのない文体と、心地よいリズム感を味わえます。
本日は、米国生まれの“越境作家”グレゴリー・ケズナジャットさんの著作『鴨川ランナー』を紹介します。
観光都市として知られる京都。コロナ前には多くの外国人で賑わっていました。
そんな京都に米国出身の留学生として来日し日本語を学び、さらには、日本の大学に准教授として残った“越境作家”が書いた本です。
「第二回京都文学賞を満場一致で受賞」という煽り文句が気になったので読んでみました!
本書のデータ
著者:グレゴリー・ケズナジャット
出版社:講談社
ページ数:147
日本と世界の狭間で生まれた中篇2本。「鴨川ランナー」……外国から京都に仕事に来た青年の日常や、周囲の扱い方に対する違和感、その中で生きる不安や葛藤などを、「きみ」という二人称を用いた独特の文章で内省的に描く。京都文学賞受賞作。
「異言」……福井の英会話教室を突如やめる羽目になった主人公は、ある日同僚の紹介で結婚式の牧師役のバイトを紹介されるが……。<公式ページより>
本書の感想
本書は、第二回京都文学賞受賞作の「鴨川ランナー」と書きおろし作品の「異言」が収録されています。
1. 鴨川ランナー
あらすじ
日本語の奇妙な魅力に吸い込まれたアメリカ人の主人公が、日本語を習得し京都でALT(外国語指導助手)として働く日常の出来事や思いを描いた作品です。
感想
日本に住まうリアルな外国人の思いを感じる作品でした。
何年も日本に住み、日本語で意思疎通ができるようになっても、一括りの“外国人”として扱われてしまう苦悩がヒシヒシと感じられました。
日本の何でも個性の前に、画一的な思い込み(性別、年齢、職業 etc…)に当てはめる所を改めて感じました。
また、主人公の思いが描かれていますが、一人称ではなく「きみ」という二人称を使うこと、および淡々とした話の流れから主人公の無力感や孤立感というのが際立っています。
決して明るい話ではありませんが、徐々に引き込まれていき、知らぬ間に読み終わっていました。
2. 異言
あらすじ
英会話学校に勤めていた主人公は、英会話学校の倒産を機に日本人の恋人の家に居候を始めます。
新たな生活が始まる中で、仕事から始まり、恋人とのプライベートでも“外国人”であることを求められる主人公の戸惑いが描かれた作品です。
感想
こちらも1個人ではなく、“外国人”として見られる主人公の苦悩が伝わってきました。
「鴨川ランナー」がドストレートな日本人からの疎外感や孤立感が強調されていたのに対し、こちらは一見受け入れられているように見えるが、それは個人ではなく“外国人”というステータスだけが受け入れられているという、切なさを感じました。
日本語をしゃべれるにも関わらず、英語での対応や、たどたどしい日本語の発音を求められる主人公のつらさが文面から伝わってきます。
どちらの話もそうですが、「役割」に押し込めたがる日本人の習性を見事に表していました。
今までに読んだことのない文体と、心地よいリズム感を味わえる本でした。
京都に米国出身の留学生として来日し日本語を学び、さらには、日本の大学に准教授として残った“越境作家”が書いた本です。
どこか英語じみた日本語の小説、気になった方はぜひご一読ください。
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